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「トレたま」取材の記録――製品誕生までの物語

2025年4月3日放送の「トレたま」取材に向けて準備した資料です。今回ご紹介いただいた製品が誕生するまでの背景や、弊社のこれまでの歩みをまとめています。取材用の内部資料ではありますが、ぜひ多くの方にご覧いただきたく、特別に公開いたします。
創業からの挑戦:光学技術へのこだわり
1960年、当社は「一眼レフカメラ用フレネルレンズ」の製造からスタートしました。
翌1961年には自社のオリジナル製品「ビームスコープ」を発表。 これは、12インチ程度の白黒ブラウン管テレビの前にフレネルレンズを設置し、画面を20インチ以上にまで拡大するという当時としては画期的な商品でした。
この製品は市場で大ヒットし、多くの家庭に映像の新たな楽しみ方を提供しました。 今でも昭和特集の番組などで紹介されることがあり、当時の革新性が色あせることなく語り継がれています。
この成功をきっかけに、当社は光学技術を活かしたモノづくりをさらに加速させ、大手メーカーからの委託生産を受けるようになりました。
リアプロジェクションテレビやレーザーテレビ向けのレンズを手掛け、特に100インチを超えるサイズでありながら、数ミクロン単位の金型加工技術を確立し、高精度なレンズ生産を実現できるようになりました。
市場の変化と危機:受託生産の減少
時代が進むにつれ、液晶テレビの大型化や中国メーカーの台頭により、受託生産の需要は徐々に減少していきました。
長年にわたり培ってきた技術があっても、市場環境の変化によって事業の継続が難しくなる可能性が出てきたのです。
そんな中、2021年に遊技機メーカーから3Dフィルムの製造依頼があり、当社は新たな分野へと足を踏み入れました。
遊技機市場は当社にとって重要な分野となりましたが、市場の流動性が高く、このままでは事業基盤としての安定性を確保するのが難しいと判断。 そこで、遊技機市場があるうちに、長年の受託生産体制から脱却し、自社製品の開発へと舵を切る決断をしました。
変革への決断:受託生産から自社製品開発へ 透明スクリーン誕生のきっかけ
これまでの当社の強みは、大手メーカーの求める品質基準を満たす高精度な製造技術でした。
しかし、受託生産の枠を超え、自社の技術を活かした製品を世に送り出すためには、新たな発想とチャレンジが必要でした。
当初、新規事業の案を出す際にはレンズとは異なる市場も検討されました。 しかし、創業から続く光学技術へのこだわりを捨てず、「これまで培ったレンズ技術を活かした最終製品」の開発を目指すことに決定。
そして、誕生したのが透明スクリーンです。 このスクリーンは、プロジェクターで投影しながらも高い透明度(透過率75%)と明るさを両立するという、これまでにない画期的な技術を実現しました。
さらに、創業当時の大ヒット商品「ビームスコープ」の名を継承し、新たな時代の「ビームスコープ」として展開することになりました。
透明スクリーンは、その特性を活かし、株式会社GENDA GiGO Entertainment様のご協力のもとスポーツイベントでの活用にも挑戦させていただきました。 2025年3月12日に開催された2024-25シーズン 第24節 サンロッカーズ渋谷 vs 川崎ブレイブサンダース戦で透明スクリーンを活用した撮影ゾーンが設置されました。
この撮影ゾーンでは、透明スクリーンの裏側に立つことで、サンロッカーズ渋谷のマスコットキャラクターと一緒に撮影できる特別な体験を提供しました。 多くの来場者の皆様にお楽しみいただき、大変好評をいただきました。
この成功を弾みに、当社は透明スクリーンのさらなる活用方法を広げていきたいと考えています。 店舗のショーウィンドウや展示会のブースなど、透明性を活かした演出が求められる場面で、より多くの方にその魅力を体験していただけるよう努力していきます。
チェンジングディスプレイ誕生のきっかけ
透明スクリーンの開発を進める一方で、当社は新たな製品の可能性を模索していました。
受託生産の注文が減少する中、「何か販売できるものはないか」「工場を動かし続ける方法はないか」と試行錯誤する日々が続いていました。
そこで、一つのアイデアとしてネット販売(Yahoo!ショッピング)で一般的なレンチキュラーレンズを販売することを決定。 販売を開始し、売り方を考える中で、ふとした疑問が生まれました。
「昔からある技術だが、ポストカードのようなチェンジング技術に応用できないか?」
この考えをもとに、レンチキュラーレンズの活用法を広める活動をスタート。 ホームページを一新し、自社で更新しやすい環境を整え、YouTubeに「レンチキュラーレンズをポストカードに貼る方法」の動画をアップするなど、情報発信にも力を入れました。
そんな中、ある一本の問い合わせメールが届きました。 「卒業制作で多様性をテーマにした作品を作りたいのですが、モニターにレンチキュラーレンズを使えますか?」
問い合わせの送り主は、名古屋造形大学の学生でした。 通常、レンチキュラーレンズをモニターに適用するには金型加工費用など多額のコストがかかります。
しかし、新しいものを作りたいという学生の熱意と、当社の新たな挑戦への想いが一致し、共同で開発を進めることになったのです。 こうして誕生したのが、チェンジングディスプレイでした。
この製品は、視点を変えることで映像や画像が切り替わるという、異なる視点を持つことで新たな見え方が生まれる体験を提供します。 ポストカードや広告ディスプレイに使われていた技術を、大型のディスプレイに応用することで、デジタルサイネージや広告業界に全く新しい視覚体験をもたらしました。
また、この技術はモニターにレンズを貼る3Dフィルムの技術も応用しており、さらなる進化の可能性を秘めています。
未来へのビジョン:革新を続ける企業へ
当社は、時代の変化に適応しながらも、核となる技術を活かし続けることを大切にしています。
フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、プリズムレンズ、大型スクリーンレンズの開発、遊技機向け3Dフィルムの製造、そして透明スクリーンとチェンジングディスプレイの誕生へと、「レンズ技術を軸にしながらも進化を続ける」という姿勢を貫いてきました。
今後は、光学迷彩技術にも挑戦し、背景を生かしながら窓を目隠しする新たな用途の実用化を目指します。
かつて「ビームスコープ」が家庭の映像体験を変えたように、透明スクリーンとチェンジングディスプレイが未来の映像の新しいスタンダードとなることを目指し、さらなる革新を追求していきます。
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