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光学基材の「位相差」とは?──PET・ポリカーボネートの違いまで徹底解説

ディスプレイや透明光学部材を扱うとき、避けて通れない特性があります。
それが 「位相差(複屈折)」 です。
透明なフィルムや樹脂は、見た目は同じでも光の通り方に大きな違いがあります。
特に、偏光板や特殊照明が関わる光学製品では、この位相差が画質や表示品質に影響することがあります。
本記事では、光学基材の位相差とは何か、そして代表的な材料である**PET(ポリエステル)とポリカーボネート(PC)**がどのように異なるのかをわかりやすく解説します。
■ 位相差(複屈折)とは何か?
透明材料に光が入るとき、本来は一定の速さでまっすぐ進みます。
しかし、材料に“応力”や“分子の並び”が存在すると、光は方向によって進む速さが変わります。
この現象が 複屈折(Birefringence) で、結果として光の位相(進み・遅れ)がずれる=位相差が生じます。
● 位相差が起きる主な要因
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押し出し成型による分子の配向
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フィルムの延伸工程
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曲げ・締付けなどの外部応力
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成形時の残留応力
この位相差は肉眼では見えませんが、偏光板越しに見ると“干渉色(虹色模様)”として現れるため、光学検査でもよく使われます。
■ なぜ位相差が問題になるのか?
光学製品、とくに偏光板を使うディスプレイでは、極めて重要になります。
位相差が大きいと起こること
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表示ムラ
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コントラスト低下
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色ズレ
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黒表示が黒くならない
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光の“にじみ”が発生
例えばスマートフォン、車載ディスプレイ、AR/VR、プロジェクション用途などでは、素材の位相差特性が品質に直結します。
■ 光学基材として代表的なPETとポリカーボネートの違い
ここからは、実務でよく使われる2つの材料を比較します。
◆ ① PET(ポリエステル)の位相差特性
PETフィルムは押し出し工程で分子が流れ方向に整列しやすく、また延伸工程でも分子配向が固定されます。
そのため、
PETの特徴
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複屈折が比較的強い
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方向性のあるストレスパターン(縦縞など)が出やすい
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位相差のコントロールが難しい(“自然発生する”)
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巻き取り条件の影響を受けやすい
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コストは安い・透明性は高い
偏光板で見ると、はっきりした干渉色が現れ、「材料内部の応力が見える」フィルムです。
◆ ② ポリカーボネート(PC)の位相差特性
PCは非晶性(アモルファス)樹脂で、分子構造がランダム。
そのため、初期状態の複屈折はPETほど大きくありません。
ただし、
PCの特徴
-
基本的には位相差が少ない(低複屈折材料)
-
ただし外力(曲げ・締付け)に敏感で、その部分だけ位相差が急増
-
温度・時間で応力緩和(アニール)しやすい
-
衝撃強度が高く、光学窓やカバーに向く
偏光板で見ると、PETのような細かい縞は出にくく、比較的滑らかな干渉色が多いです。
■ 二つの材料を“光の見え方”で比較
| 特性 | PET | PC |
|---|---|---|
| 初期複屈折 | やや高い | 低い |
| 干渉色(偏光下) | 強く・縞がはっきり | 全体的に穏やか |
| 応力に対する感度 | 中 | 高い(局所的に大きくなる) |
| 位相差コントロールのしやすさ | 低い | 条件次第で低複屈折化が可能 |
| 光学用途 | 位相差フィルム等に利用 | 光学窓・保護カバーに適する |
■ 光学製品ではどう使い分けるべきか?
光学設計の観点では、次のように考えるとわかりやすいです。
● PETを選ぶべきケース
-
コスト重視
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フィルム用途が中心
-
位相差を“利用する”製品(延伸PET=位相差フィルム)
● PCを選ぶべきケース
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カバーガラス代わりの透明保護板
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ディスプレイの表面光学窓
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偏光環境下での色ムラを防ぎたいとき
■ 透明スクリーン・チェンジングディスプレイにおける注意点
ビーム電子工業のような“見せる光学製品”では、環境光の偏光成分で意図しない干渉色(色ムラ)が出る可能性があります。
特に、
-
PET基材フィルム → 干渉が出やすい
-
PCの透明板 → 比較的出にくいが、曲げ・締付けには注意
ショールームや展示会照明には偏光成分が多いため、位相差の影響は想定以上に目立ちます。
■ まとめ
-
位相差(複屈折)は光学材料における非常に重要な特性
-
PETは複屈折が強く方向性が出やすい
-
PCは初期複屈折が小さいため光学窓に適する
-
偏光板や特殊照明が関わる製品では位相差の理解が必須
-
表示ムラ・色変化を防ぐためにも、材料選定と応力管理が重要
光学基材の特性は、最終的な“見え方”に直結します。
ディスプレイ開発や光学デバイス設計では、必ず位相差の考慮が必要です。
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